Q: 「培養肉」の作り方を詳しく知りたい

Q: 「培養肉」の作り方を詳しく知りたい

A: 会社によって少しづつ作り方が異なるものの、簡単に言うと、

①良質な細胞(タネ細胞)を動物からいただく
②細胞の保存や大量培養前の前処理をする
③ビール醸造に使うような装置に、糖やアミノ酸などの栄養の詰まった液(培養液)と細胞を入れて細胞を育てる
④培養液を洗い流し、増やした細胞を取り出す
⑤増やした細胞を原料として食品を作る

の5ステップです。

もっと知ろう

細胞から培養肉を作る5つのステップ

本資料で出てくる専門用語

どこの細胞を使って培養肉を作っているの?

動物の中には様々な細胞があり、企業によって使うものが異なります。例えば筋肉に成長する筋芽細胞を動物の筋肉から採取したり、その他多様な幹細胞を使ったりする会社もあります。

幹細胞を使う場合、幹細胞をそのまま食べるのではなく、筋肉や脂肪など様々な細胞に成長させる工程が必要です(私たちが通常食しているお肉も、幹細胞がいろんな細胞に成長してできたものです)。

幹細胞を動物から取り出し、動物の体の外で、動物の体内で通常起きているような、幹細胞の増殖と分化(筋肉や脂肪など様々な細胞に成長させること)を再現します。幹細胞の段階から動物の外で細胞を育てる細胞性食品は、海外では主流の作り方の一つとなっています。

筋芽細胞とか幹細胞とか、、、聞きなれない生物学の用語だけど、要は最終的なお肉になった細胞というよりも、お肉の細胞になる一歩手前やそれより手前の細胞を動物からいただいて、その細胞を動物の体内と同じ環境のなかで増やしたり成長させてお肉や脂肪の細胞をつくるということ?

粗く言うとそういうことかな。
また、細胞を動物からいただく時には、動物の健康状態を確認するなどして、質の良い元気な細胞を選ぶのが一般的です。

ステップ②の「大量培養前の前処理」って何をするの?

これは会社によって様々です。

例えば動物からいただいた細胞を何回か(何世代分か)培養していくと、増える能力の高い細胞が生まれるときがあります。こういった細胞を株化細胞と言い、株化細胞を選んで量産に用いる会社があります。

株化の処理をせずに、採取した動物の細胞をそのまま培養する方法もあります。日本国内で開発されている細胞性食品は、この株化をしていない細胞を使用したものが主です。

他のパターンもありますが、これは日本での販売開始の可能性がありそうなものから今後順次共有していきますね。

動物の細胞以外には、何を使って生産するの?

製造の②-⑤のステップのうち、特に

​②細胞の保存や大量培養前の前処理をする
​③ビール醸造に使うような装置に、糖やアミノ酸などの栄養の詰まった液(培養液)と細胞を入れて細胞を育てる

のステップで使っているものは、皆さまからすると特に気になるポイントかと思います。

ステップ②は、例えば動物の筋肉のかたまり(筋肉組織、ごく少量でよい)からタネ細胞をステップ③で増やす前の、いくつかの準備を含みます。

例えば、ごく少量の筋肉のかたまり(筋肉組織)をバラバラの細胞にほぐすなどして増やしやすくしたり、細胞を保存したりする工程があったりします。

その際に使う保存液などは医療現場では使用されていますが、食品として使用されたことがないものを使う場合があります。この場合、使用した保存液が残らないようにするための施策や、残留基準について業界ですり合わせをする必要があります。

ステップ③では何を使うの?

ステップ③でよく話題になるのは成長因子の使用です。

細胞をより早く増やすために、培養液には糖やアミノ酸のほか、人間を含むあらゆる動物の体のなかで細胞が増えるときに必要不可欠なたんぱく質成分を培養液に加える場合があります。このたんぱく質成分を成長因子とも呼びます。

例えば細胞性鶏肉(「培養鶏肉」)を生産する際には鶏由来のたんぱく質成分を成長因子として使うことがあります。

たんぱく質成分以外にも食品として使用されたことがない血液成分が成長因子として使用される場合があります(FBSと呼ばれる牛の胎児の血清が使われる場合などが相当します)。培養液に加えられる成長因子は、細胞が増えるにつれて消費されて(変性や分解してその活性が失われて)いきます。

家畜に与える飼料(家畜が大きく成長するにつれて消費され、なくなっていくもの)や肥料と、それによって生産されるお肉や野菜そのものでは安全性の考え方が異なるように、細胞が増える過程で消費されるうえにステップ③でも洗い流される成長因子と、最終的にできた細胞性食品では安全性についてより実態に即した方針で整理する方が望ましいと考えられます。

(詳しくは、「Q: 培養肉って食べても大丈夫?」をご参照下さい)

成長因子として動物由来のものが使用されるということは、「培養肉」も動物から命をいただかないとお肉が作れないってこと?

現時点では、成長因子などタネ細胞以外の動物由来の資源を、細胞性の「お肉」の生産に使う会社も一定数います。

ですが、特に開発が進んだ会社では、細胞農業による生産工程からタネ細胞以外の動物由来の成分の使用を排除し、動物由来でない原料や食経験のあるもので代替しようという動きが、主流のようにみえます。

細胞農業領域の開発者にはベジタリアンやヴィーガンが多いからかもしれません。